先日IB(投資銀行)に勤めていた私の友人が会社を辞めました。彼とは就職活動中に出会い、それから連絡を取る仲になりました。彼と仕事の話をするといつもこう言っていました。
「この世界(IB)は狂っている」
今日はなぜこの世界が狂っているのか。なぜ狂ってしまったのか。このことについて、住宅ローン証券化のカラクリといった視点から書いていこうと思います。少し偏っている部分もあるので、こんな世界もあるのか程度で読んでみてください。
2008年9月15日に連邦倒産法第11章の適用を連邦裁判所に申請し倒産した会社。リーマン・ブラザーズ。近年では、ライブドアへの転換社債型新株予約権付社債の投資などで日本でも知られるようになりました。住宅ローン証券化のカラクリを説明するためには、この企業を語らなくてはなりません。
リーマンブラザーズは何をしていたのか?それを『金融大狂乱』の一部を使って説明していきましょう。
2004年アメリカはデリバティブ時代を迎えます。
ウォール街のIB(投資銀行)で生み出されたデリバティブの中のデリバティブ。それがCDO(債務担保証券)です。リーマンショックでよく知られているのが、RMBS。すなわち住宅ローン担保証券ですが、CDOはRMBSやモーゲージ担保証券、社債、クレジットカード債権などの金融資産を包括したものになります。
当時アメリカでは住宅ローン会社が増殖し始めていました。そして、住宅ローン業界はある画期的(実際は画期的でも何でも無いのですが)方法を創りあげます。長短期間の住宅ローンを貸し出し、借り手がついたら、ローン自体をウォール街の銀行に売ってしまうという方法を。
住宅購入者の平均借入額はおよそ30万ドルであり、初年度の金利が1-2%に抑えられ、1-3年後から金利が上昇する仕組みになっていました。そこで、住宅ローン業界は1000件の住宅ローンをひとまとめにします。
次に、住宅ローン会社はIBに連絡を取り、1000件の住宅ローンをまとめた総額3億ドルの債権について説明します。その説明方法とは、30万ドルの住宅ローンを年利2%の頭金なしで借りると、毎月の返済額はおよそ500ドル。これが1000件で1000件×500ドルで債権の保有者、要するにIBに対して月々50万ドルの現金が支払われることになります。さらにこの債権は不動産権利証書というい担保によって100%保証されているだけでなく、不動産ブームの中で住宅価格が右肩上がりに推移しているため住宅所有者からの月々の返済が滞るリスクはゼロに等しいというものでした。
IBはその3億ドルの住宅ローンを買い取り、普通の債権と同じように証券化し、その債券を投資家に販売します。そして、債券の保有者に支払われる50万ドルが、債券購入数に応じて投資化に分配されるのです。住宅ローン会社から債権を買い取る場合、IBは3億ドルを短期コマーシャル・ペーパー市場から調達します。この債権が商品化されるとモーゲージ担保証券(MBS)という名前に変わります。
この時点で違和感を感じる人もいるでしょう、なぜなら、債券の横流しをしているだけなのにも関わらず、利益が生まれるということ。さらには、その利益に対してのリスクがゼロという異常な事態に。
しかし、異常なのはここからです。個別最適主義の結末が表れているエピソードがあるので紹介しましょう。
この状況下で、アメリカの成果報酬主義が暴走を始めます。住宅ローン会社の営業パーソンは何をしたのかというと、自分の歩合給を増やすために「リスクなど関係ない」「売れれば何でも良い」ということで契約を取りまくったのです。
なぜ契約を取りまくることができたのか?
どうせ一ヶ月以内にリーマンやメリルリンチといったIBに売ってしまうから。住宅ローン会社は借主の健全性などどうでも良かったのです。中低所得者に対して、相手が大喜びする条件で見境なくローンを売りまくります。
さらに、IBもそんなこと関係ありませんでした。なぜなら債権を市場で捌いてしまえばリスクは債権所有者に転嫁されるからです。その債権は飛ぶ様に売れます。
その債権を買った会社が、イギリスのHSCB、アイスランドのカウプシング、日本の東京三菱UFJ銀行などでした。
ここまで知ると既におかしなことが起こっていると誰もが思うのではないでしょうか。結局責任の擦り付け合い。自分さえ良ければいいという個別最適主義の象徴のような筋立てです。
さて、なぜ我々が見てもおかしいと思えるような状況に対して、警鐘を鳴らす人が少なかったのかということです。
それが、フィッチ・レーティングス、ムーディーズ、スタンダード&プアーズという信用格付会社からの高い信用評価でした。実はこの信用格付会社は債券の商品開発に関しても助言を与え、トリプルA格付けのCDOの発行を可能としたのでした。まさにエンロン事件と同じようなことをやっているのです。
この真っ只中にいたIBこそリーマン・ブラザーズだったのです。
リーマン・ブラザーズといえば、アメリカでも全国の一流大学出身の秀才を採用することで有名です。ハーバード、MIT、イェール、プリンストン、ペンシルベニア、スタンフォード、ノースカロライナの出身者がほとんどです。そんな優秀なメンバーをそろえてでも、この危機を乗り越えることはできなかったのです。さらに、異常な事態に気付くこともありませんでした。なによりも、異常さを肯定していたということです。
そう、『狂っていた』。
そこには仕事に対しての高潔さや謙虚さ、そして人間性が欠けていたのかもしれません。売れさえすればいいのか、利益がすべてなのか、自分さえ良ければいいのか、それは違うと思います。
最後に友人がポツリといった言葉が理解できます。
「この世界で生きていくのに疲れた。人間味溢れる世界で生きたい」
「この世界(IB)は狂っている」
今日はなぜこの世界が狂っているのか。なぜ狂ってしまったのか。このことについて、住宅ローン証券化のカラクリといった視点から書いていこうと思います。少し偏っている部分もあるので、こんな世界もあるのか程度で読んでみてください。
2008年9月15日に連邦倒産法第11章の適用を連邦裁判所に申請し倒産した会社。リーマン・ブラザーズ。近年では、ライブドアへの転換社債型新株予約権付社債の投資などで日本でも知られるようになりました。住宅ローン証券化のカラクリを説明するためには、この企業を語らなくてはなりません。
リーマンブラザーズは何をしていたのか?それを『金融大狂乱』の一部を使って説明していきましょう。
2004年アメリカはデリバティブ時代を迎えます。
ウォール街のIB(投資銀行)で生み出されたデリバティブの中のデリバティブ。それがCDO(債務担保証券)です。リーマンショックでよく知られているのが、RMBS。すなわち住宅ローン担保証券ですが、CDOはRMBSやモーゲージ担保証券、社債、クレジットカード債権などの金融資産を包括したものになります。
当時アメリカでは住宅ローン会社が増殖し始めていました。そして、住宅ローン業界はある画期的(実際は画期的でも何でも無いのですが)方法を創りあげます。長短期間の住宅ローンを貸し出し、借り手がついたら、ローン自体をウォール街の銀行に売ってしまうという方法を。
住宅購入者の平均借入額はおよそ30万ドルであり、初年度の金利が1-2%に抑えられ、1-3年後から金利が上昇する仕組みになっていました。そこで、住宅ローン業界は1000件の住宅ローンをひとまとめにします。
次に、住宅ローン会社はIBに連絡を取り、1000件の住宅ローンをまとめた総額3億ドルの債権について説明します。その説明方法とは、30万ドルの住宅ローンを年利2%の頭金なしで借りると、毎月の返済額はおよそ500ドル。これが1000件で1000件×500ドルで債権の保有者、要するにIBに対して月々50万ドルの現金が支払われることになります。さらにこの債権は不動産権利証書というい担保によって100%保証されているだけでなく、不動産ブームの中で住宅価格が右肩上がりに推移しているため住宅所有者からの月々の返済が滞るリスクはゼロに等しいというものでした。
IBはその3億ドルの住宅ローンを買い取り、普通の債権と同じように証券化し、その債券を投資家に販売します。そして、債券の保有者に支払われる50万ドルが、債券購入数に応じて投資化に分配されるのです。住宅ローン会社から債権を買い取る場合、IBは3億ドルを短期コマーシャル・ペーパー市場から調達します。この債権が商品化されるとモーゲージ担保証券(MBS)という名前に変わります。
この時点で違和感を感じる人もいるでしょう、なぜなら、債券の横流しをしているだけなのにも関わらず、利益が生まれるということ。さらには、その利益に対してのリスクがゼロという異常な事態に。
しかし、異常なのはここからです。個別最適主義の結末が表れているエピソードがあるので紹介しましょう。
この状況下で、アメリカの成果報酬主義が暴走を始めます。住宅ローン会社の営業パーソンは何をしたのかというと、自分の歩合給を増やすために「リスクなど関係ない」「売れれば何でも良い」ということで契約を取りまくったのです。
なぜ契約を取りまくることができたのか?
どうせ一ヶ月以内にリーマンやメリルリンチといったIBに売ってしまうから。住宅ローン会社は借主の健全性などどうでも良かったのです。中低所得者に対して、相手が大喜びする条件で見境なくローンを売りまくります。
さらに、IBもそんなこと関係ありませんでした。なぜなら債権を市場で捌いてしまえばリスクは債権所有者に転嫁されるからです。その債権は飛ぶ様に売れます。
その債権を買った会社が、イギリスのHSCB、アイスランドのカウプシング、日本の東京三菱UFJ銀行などでした。
ここまで知ると既におかしなことが起こっていると誰もが思うのではないでしょうか。結局責任の擦り付け合い。自分さえ良ければいいという個別最適主義の象徴のような筋立てです。
さて、なぜ我々が見てもおかしいと思えるような状況に対して、警鐘を鳴らす人が少なかったのかということです。
それが、フィッチ・レーティングス、ムーディーズ、スタンダード&プアーズという信用格付会社からの高い信用評価でした。実はこの信用格付会社は債券の商品開発に関しても助言を与え、トリプルA格付けのCDOの発行を可能としたのでした。まさにエンロン事件と同じようなことをやっているのです。
この真っ只中にいたIBこそリーマン・ブラザーズだったのです。
リーマン・ブラザーズといえば、アメリカでも全国の一流大学出身の秀才を採用することで有名です。ハーバード、MIT、イェール、プリンストン、ペンシルベニア、スタンフォード、ノースカロライナの出身者がほとんどです。そんな優秀なメンバーをそろえてでも、この危機を乗り越えることはできなかったのです。さらに、異常な事態に気付くこともありませんでした。なによりも、異常さを肯定していたということです。
そう、『狂っていた』。
そこには仕事に対しての高潔さや謙虚さ、そして人間性が欠けていたのかもしれません。売れさえすればいいのか、利益がすべてなのか、自分さえ良ければいいのか、それは違うと思います。
強くなければ生きてゆけない。
だが、優しくなければ生きる資格がない。レイモンド・チャンドラー『プレイバック』より
最後に友人がポツリといった言葉が理解できます。
「この世界で生きていくのに疲れた。人間味溢れる世界で生きたい」
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